令和 3年度 第2回産業教育に関する講演会

(オンラインでの講演会)

日時:令和3年11月26日(金) 15:15 ~ 16:50
演題:「サステナブル社会実現のための東洋紡の取り組み」
講師:東洋紡株式会社 常務執行役員(イノベーション部門の統括)
     大 田 康 雄 様

講演会1

開会挨拶 :坂元 龍三 会長 (一部要約)

 社会はDXやコロナ禍の影響を受け、大きな変革期を迎えております。先日、グラスゴーで開催されたCOP26でも討議されたカーボンニュートラル実現への取り組みは多くの人々の関心を喚起し、グローバル社会に大きなインパクトを与えております。
 企業社会では、経済価値を追求するのみでなく、SDGsやESG等の課題解決に取り組むことで社会に貢献し社会的価値も高めようという活動が強化されております。
 NHKの大河ドラマ「青天を衝け」の主人公である渋沢さんは、日本の資本主義の黎明期である明治初期、合本主義を提唱しながら、その弱点を見抜いて、一方で社会福祉活動にも取り組み、社会的格差を生み出さない包摂的社会作りをめざしておられたことは大変興味深いことです。
 論語と算盤の中で学問は実業に結びつき、生かされるものでなければならないとして、商法講習所(後に大学へ昇格)等を設立し、実業教育にも熱心に取り組まれました。
 実業教育の活性化と優れた人材育成という課題は、今後DXの進展の中でAI等のデジタル技術の社会実装が拡大しても変わることのない重要課題であります。
 本日の講演は私共、東洋紡がサステナブルな社会実現のためにどのように貢献しようとしているかを 当社常務執行役員 大田康雄の方から紹介させていただきます。どうぞよろしくお願い致します

 

講演会2

講演要約

 東洋紡は、創業が1882年で、来年140周年を迎えます。渋 沢 栄 一 さんが日本で500社以上設立された会社のなかで、おそらく東洋で最初の近代的な紡績会社であり、大阪紡績という名前で設立されました。
 企業理念は右から読みますと「順理則裕」でこの言葉を大事にしています。
 理というのはいろいろな考えがありますが、きっちり倫理に基づいたことをしていけば、そのうち社会も豊かになるし、ひいては自分たちも心を含めて豊かになるというような教えと承っております。
 今会社を取り巻く環境のなかで、ESG経営というのが非常に重要な側面となっております。単に儲けるだけではなくて、社会にも貢献していくことが、求められるなかで100年前にこう言葉を残していただいてそれを引き継いでいくことは、非常に重要だと考えています。
 私どもは、次の成長つまり、次の世の中に役立つ企業になっていくために、企業理念の体系を見直し、目指す姿としてのビジョンを設定しています。
 素材プラスサイエンスで、人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループを目指しています。
 東洋紡は繊維の会社というイメージがあるのですが、今売り上げの45%は、フィルムと機能性の樹脂の事業がメインであります。
 モビリティは自動車関連の事業で、素材としてエアバッグとか自動車用のプラスチックとかを扱っている事業です。
 生活環境は、身の回りの安全であるとか安心、あるいは環境をきれいにしていこうという、様々なソースであるとかの素材を扱う事業であり、これはまさに今日申し上げたい主題ですが、積極的に環境を良くしていく事業として今後拡大していきたいところです。
 もう一つはライフサイエンスで、健康に関する診断薬とかあるいは医薬、血液浄化膜なども扱う4つの事業からなっております。
 繊維の技術を基にしていろいろな新しい製品や事業に拡大していくなかで、大きな役割を果たしたのが研究開発でございます。
 私どもの研究所は、大津市の堅田にございまして、ここに23万平米、だいたい東京ドーム7つ位の敷地のなかに、いろいろな研究施設があり、現在おそらく800名を超えるメンバーが研究開発をしております。
 基盤技術を基にしながら、新しい要素技術を加えて、いろいろな新しい製品、膜にしたりフィルムにしたり不織布にしたりして、事業の拡大を図ってきました。
 サステナブル社会に向けた当社の取組み ですが、いま企業に求められているのはESG経営とSDGsについてです。ESGのEは環境にどのような取組みをしているのか、Sはソーシャルで社会に対して働き方や、ダイバーシティ、例えば女性進出に対してどういう手を打っているのだとか、あとGはガバナンス公明公正透明な経営を行っていく、積極的に情報を開示して、市場と対話するなどに取り組む必要があります。
 またSDGsは、2015年の国連サミットにおいて全会一致で採択された、2030年までに目指すサステナブルな課題が「地球上の誰一人も取り残さない」への取り組みです。
 私どもの会社が大事にしている言葉としてもう一つ「天下無寒人」があります。これはちょうど100年位前の社長 阿部 房次郎さんが、揮毫された扁額が綿業会館に残っています。
 「新製布裘」という白楽天の漢詩のなかの言葉です。まさに何人も取り残さないという意味で100年前からESGとSDGsに繋がる言葉を先達は残して頂いたんだなあと、改めて気を引き締めて引き継いでいきたいと考えている次第です。
 サステナビリティ推進の考え方として、ESGと、SDGsだけでは成長出来ませんので、世の中の役に立つ価値を提供しながら皆が豊かになっていくという、事業面と経営基盤軸の両方で経営を廻していく考え方を進めております。
 事業運営のなかの課題で、① 炭酸ガスの削減と ② プラスチックスがあります。特に海洋プラ、マイクロプラスチックスが環境を汚染していることがありますので、CO₂と廃棄物の問題は、当社にとって非常に重要な課題と考えております。
 まとめとしまして、私どもの事業が置かれる環境において、非財務指標とくにESGが非常に重要であり、特にSDGsの関連で、温暖化ガスの削減や廃棄物を含めての環境問題は企業にとっての最終課題になっております。今迄述べました課題の達成には多くのイノベーション、これから若い方々が挑戦していただくところが非常に重要でありますので、当社も保有している価値提供能力を出来るだけ高めて、サステナブル社会の実現に少しでも貢献したいと考えております。
と締めくくられました。
 大変有意義なご講演を拝聴できました。